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レビュー(Amazon.co.jp)
香港の中国返還(1997年7月1日)を挟む約2年間、ノンフィクション作家で写真家の星野博美は激動の香港で暮らし、その希有な体験をもとに1冊の本と1冊の写真集を発表した。前者はごく個人的な問題から香港の置かれた状況までを魅力的な語り口でつづった『転がる香港に苔は生えない』。そして後者がA4判、100余枚のカラー写真で構成された本書である。学生時代にも交換留学生として香港で1年間過ごし、再び生活者として戻ってきた星野は、旅行者とは多分に違った感覚でこの土地と接していたはずだ。それが1枚1枚の写真から何とはなしに感じられる。ゴミの散らかった路上を撮影の対象とするときも、星野はその雑然としたありさまを物珍しげに強調するのではなく、人々のふだんの生活の結果として道が汚れているだけ、とでもいうようなごく自然な感じで捉えている。想像するに、エキゾチックな光景をわざわざ探して撮るのではなく、たまたま心に響いたものを記録した結果がそうなっているのだろう。雨の滴が美しい飾りになっている無骨な自転車、売れ残ったひと切れのスイカ、砂地に突っ伏して寝ている犬など、どこかユーモラスで叙情的でもある情景が、過度にセンチメンタルではないタッチですくい上げられているのが本書の魅力。それがドラマチックな展開で読ませる『転がる香港に苔は生えない』との違いだ。この写真集はノンフィクションの内容を視覚的になぞる本ではないし、ノンフィクションも写真の説明ではないが、重なり合う部分も少なくない。読んでから見る、あるいは見てから読むことで楽しみは増幅される。(松本泰樹)
香港の中国返還(1997年7月1日)を挟む約2年間、ノンフィクション作家で写真家の星野博美は激動の香港で暮らし、その希有な体験をもとに1冊の本と1冊の写真集を発表した。前者はごく個人的な問題から香港の置かれた状況までを魅力的な語り口でつづった『転がる香港に苔は生えない』。そして後者がA4判、100余枚のカラー写真で構成された本書である。学生時代にも交換留学生として香港で1年間過ごし、再び生活者として戻ってきた星野は、旅行者とは多分に違った感覚でこの土地と接していたはずだ。それが1枚1枚の写真から何とはなしに感じられる。ゴミの散らかった路上を撮影の対象とするときも、星野はその雑然としたありさまを物珍しげに強調するのではなく、人々のふだんの生活の結果として道が汚れているだけ、とでもいうようなごく自然な感じで捉えている。想像するに、エキゾチックな光景をわざわざ探して撮るのではなく、たまたま心に響いたものを記録した結果がそうなっているのだろう。雨の滴が美しい飾りになっている無骨な自転車、売れ残ったひと切れのスイカ、砂地に突っ伏して寝ている犬など、どこかユーモラスで叙情的でもある情景が、過度にセンチメンタルではないタッチですくい上げられているのが本書の魅力。それがドラマチックな展開で読ませる『転がる香港に苔は生えない』との違いだ。この写真集はノンフィクションの内容を視覚的になぞる本ではないし、ノンフィクションも写真の説明ではないが、重なり合う部分も少なくない。読んでから見る、あるいは見てから読むことで楽しみは増幅される。(松本泰樹)

