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アイテム詳細
豊島 与志雄(翻訳)
岩波書店
価格:¥ 798
発売日:1986-06 /通常24時間以内に発送
ジャン・クリストフ 2 改版 (2) (岩波文庫 赤 555-2)
ジャン・クリストフ 4 改版 (4) (岩波文庫 赤 555-4)
ジャン・クリストフ 3 改版 (3) (岩波文庫 赤 555-3)
ベートーヴェンの生涯 (岩波文庫)
魔の山 (上巻) (新潮文庫)
おすすめ度:
時代と戦いし者
あまりにも繊細で情熱的な性格故に,周囲に対して寛容に接することが出来ず,徐々に孤独になってゆく孤高の天才ジャン・クリストフ.
自分の演奏を真剣に聞かない無知で傲慢な聴取に対し練習曲を弾きこう叫ぶ
「君たちにはこれで十分だ」
そのような事を行う彼の演奏会にあるとき人がほとんど入らなかった.だが彼は負けずに言い放つ
「素晴らしい,これで私の演奏が良く響く」
そしてこの彼はこのような言葉で最後を迎える
「他日われは新たなる戦いのためによみがえるであろう」
『いずれの国の人たるを問わず、苦しみ,闘い,ついには勝つべき,あらゆる自由な魂に捧ぐ』
この冒頭の作者の言葉は時代を超える普遍性を秘めたものだろう.
いかなる日もクリストフの顔をながめよ
演奏会で無理解な聴衆に腹を立てたクリストフは、幼稚なピアノ練習曲を無造作に叩きつけてこう言い放つ.
「諸君らにはこれで十分だ!」
暴動が起きる.
頽廃しきったパリで、クリストフは雄々しい精神のまったく失われた病的な芸術文化に中毒(あて)られる.
そうして、会う人ごとにこう訊ねる.
「あなたは健全ですか?」
訝しがられる.
クリストフは死の床で悟りを開く.
それは自然と生命に比した芸術の無力を知るということだった.
「芸術の声音は窮屈だ。人の精神よ黙れ! 人間に沈黙あれ!」
しかし彼は起き上がって、また作曲を始めてしまう.
およそ20世紀の芸術に欠落していたあらゆる真理を、クリストフは一身にかき集めて煌々と燃え上がっている.彼は近代社会に甦った新しいベートーヴェンであり、芸術的精神の実体化した姿なのだ.偉大なるクリストフの炎は、遂には我々のなかの弱き心を焼き尽くすに至る.
クリストフが向き合う19世紀末西欧社会の、なんと卑俗にして病弱であることか.そして、それがなんと現代社会に似ていることか.だがゲーテもまた同じものと戦ったし、それ以前にもそれ以後にもまったく同じ悪意が存在し続けていた.つまり、芸術を取り巻く環境はいつの時代も変わらないのである.
だからこそ、「いずれの国の人にてもあれ、闘い、苦しみ――ついには勝つべき――あらゆる自由なる魂よ」とロマン・ロランは呼びかける.『ジャン・クリストフ』を手に取ったものは、その声に応えずにはいられない.そして――惰弱なる精神を焼き尽くされ、生まれ変わった読者は、我もまたクリストフのごとくあらねばと思う.
そのように感じる人々が絶滅しない限り、『ジャン・クリストフ』は決して滅びない.それは同時に、芸術が決して滅びないということでもある.
うほほっ?!(;'Д`)ハァハァ
(;'Д`)ハァハァ ジャンクリストフという才能はあるものの、悪意ある者によって道が阻害されていく青年の人生を描いたものだ。
熱き魂を持った青年の情念がひしひしと感じられた。おいらもピアノを弾くので、こいつの気持ちは分かった。
真の英雄とは?
「ジャン・クリストフ」に最初に出会ったのは高校生の時でした。それからくり返し読んでます。
皆さんは「英雄」とはどんな人物をイメージされているでしょうか?ナポレオンのような人でしょうか?大成功をおさめ、大金持ちになったような人でしょうか?
ロマンロランは、力や思想によって人を支配せしめるような人を「英雄」とはみなしていません。ロマンロランは「心情において人を支配せしめることができる人こそが真の英雄である。」とその緒言の中で言っております。その理想像としてベートーベンがある、とロマンロランは言っております。そんなベートーベン的な要素を兼ね備えた英雄像を彼はジャン・クリストフとして完成させたのだと思います。そして、それは全ての人間の中にある理想なのです。それゆえ、人はこのジャン・クリストフを読んだ時、その時代、年齢を問わず、いつもジャン・クリストフとともに生きることができるのです。
皆さんも本書の中でジャン・クリストフと出会ってください。
長篇ですが、高校生なら十分読めると思います。
愛し、そして闘った人生の大河ドラマ
クリストフは、独仏国境地帯のライン地方に生まれ、音楽家の家系に育ち、堕落した父親との軋轢の中で人格を形成し、異国の都で一家を成す。作者自身認めるように、生い立ちはベートーヴェンそのもの。しかし主な舞台はヴィーンではなくて19世紀末から20世紀初頭のパリ。
確固たる芸術的理想を実現するために、激しく闘い、芸術界、社交界に敵を多く作る。自ら信じる社会正義の実現のために革命運動にまで身を投じ、亡命生活の中で、今度は旧友の妻と身を焦がすような恋におちる。数少ない親友との友情には全身全霊を傾ける。本当に激しい生き方、波乱万丈の人生だ。
しかし、岩をも砕く激しい防爆や渓流がやがて平地を肥沃に潤し、悠々たる大河として海に注ぎ、その名を失うがごとく、年を経て、クリストフは、相闘う思想の両局を受け入れ、かつて敵であった批評家、芸術家連中とも、その真摯な信念を貫いた生き方故に同志として和解し、自分の苦悩と闘いの人生が次世代のより幸福な世界に少しなりとも貢献したことを神に感謝し、満足しながら、光の彼方へと消えていく。そういう意味では楽観主義的ヒューマンドラマ。
1870年のプロシア・フランス戦争を経てドイツが国民国家として漸く成立した頃から第1次大戦前夜までの緊張した時代を背景として、独仏の敵対するナショナリズムと友情との軋轢、パリへの愛着とドイツの芸術家としての誇りとの軋轢が描かれ、やがてクリストフの心中に普遍的な人類愛が満ちていく。そういう意味では、シラー=ベートーヴェン流の人類皆兄弟的理想主義に立つ歴史ドラマ。
エピソードとして、プチブルジョア的価値への批判とロシア革命前夜の国際的社会主義運動への理解も見られる。当時の社会思潮や芸術潮流への批評もたくさん織り込まれている。音楽分野では、サンサーンスらフランス近代を代表するアカデミックな作風は、新たな観念を取り散らかしただけで感情と結びつかないペダンティックな音楽とこき下ろされ、ブラームスは感傷と形式を弄ぶ新古典主義者と批判され、またイタリアのヴェリズモオペラは低俗と一蹴する一方で、間接的にではあるが、この時代のフランス知識人に多く見られるように、ヴァーグナーを称揚しているのも興味深い。ドビュッシーについては一言ふたことではあるが、新たなフランス音楽としての期待が述べられるが、モーリス・ラヴェルについては、その本格的に活躍期の前ということで触れられてはいない。そういう意味では、文化評論としても面白い。
これだけいろんなことが詰め込まれていると、確かに2000ページの大部になるだろう。ずっしり読み応えがある。

